彦坂栄治のポートフォリオVol.1

18才より13年に渡り、ライフワークとして養鶏場を営む父の働く姿を撮り続けていました。しかし数年前、アメリカの「バイオエネルギー政策」による飼料の値上がりなどの影響で、養鶏場は廃業を余儀なくされました。それをきっかけに、アメリカの農民たちがどのように農業に取り組んでいるのか、どうしても自分の目で見たくなり、2014年からアメリカの農民たちの姿を撮り始めることに。コマーシャルや雑誌の仕事の合間をぬって、年に1回アメリカへ。2週間ひたすら農場をまわり、2年をかけ4×5（4の5）のフィルムで 200人以上のファーマーを撮影。そうして撮りためた写真を昨年、ようやく写真集として出版することができました。

実家の父の仕事を廃業に追い込んだアメリカの農業に、最初は多少構えてしまう気持ちもありましたが、彼らと向き合うと本当にいい奴ばかり。とにかく、彼らの表情を自由に見て欲しい作品です。学生の頃、初めて買ったリチャード・アヴェドンの写真集に衝撃を受け、ずっと自分もやりたいと思い続けていた写真集。クオリティも大事ですが、自分が本当に撮りたい！楽しい！と思えているかということに苦悩し、葛藤した作品です。写真を職業とする人間としてやっと、ひとり立ちできた、写真家としてようやくスタートできた。と思える経験でした。